非城識人ノート

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戦国武将の書状展@上田市立博物館

先日、長野県上田市立博物館にて行われた特別企画展「戦国武将の書状展」を拝観しました。

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同展ポスター


 本展は、県外収集家による古文書コレクションから、真田昌幸・信繁(幸村)、織田信長豊臣秀吉・秀頼、石田三成徳川家康直江兼続伊達政宗といった著名な武将や桃山文化の中心人物たちの書状を借用し、自筆文書を含む貴重な史資料を通じて、彼らを取り巻く時代の雰囲気を紹介する展示となっていました。
 本展では、上田にちなんで真田信繁九度山に配流時代に、姉・松が嫁いだ小山田茂誠に宛てた老いを嘆く、著名な自筆書状や、石田三成天正19年に、奥羽仕置における地元の大名家老に太閤検地の指示などを送った書状にて、自身が泊まる所にいろりやこたつをしつらえ、熟した柿などを用意するよう事細かく求めているものなど、それぞれの武将の人柄もうかがえるような、著名な書状の数々が展示されていました。それぞれの書状の内容ごとに情報量が多く、感情まで読み取れるようなものばかりで、とても興味深く拝見させていただきました。
 しかし、本展は図録を作成する価値があると感じるほど良い特別企画展だったのですが、図録の刊行はなく、出品目録の配布もなかったため、一つ一つの書状を穴が開くほど観察しました(笑)。また、驚いたのは本展に出品された文書のほとんどが、県外の収集家のコレクションであるということでした。そうした事情によって図録化が難しいのか否かはわかりませんが、出品リストは配布されても良いように感じました。本展の解説資料としては、展示された書状の古文書学的な見方を紹介したA3サイズ1枚の配布資料があり、書状に親しみがない来館者に対しても、観察のポイントを端的にまとめていました。
 内容がとても満足度の高い展示だったので、来館者にもフィードバックがされるような資料があると、より充実した展示になると考えさせられました。

 また同時期に、夏季企画展として「別所線復興記念 千曲川の赤い鉄橋と上田丸子電鉄の100年」という展示も開催されており、興味深く拝見させていただきました。

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上田市立博物館が所在する上田城跡公園

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