徳川家康と北遠@浜松市立内山真龍資料館
浜松市立内山真龍資料館にて行われている特別展「徳川家康と北遠」を拝観しました。
本展は、永禄11年(1568)12月に侵攻し遠江を拠点にした徳川家康が、武田氏と二俣城・犬居城などをめぐる攻防が繰り広げられた北遠(現在の浜松市天竜区)に、どのような関わりがあったのか紹介するものでした。
構成
本展は以下のような構成となっていました。
第2章 二俣城で戦った武将たち(第2展示室)
…二俣城の戦いをイラストも用いて解説。ゆかりの地も紹介。
第3章 徳川家康と天野氏との戦い(第2展示室)
…家康による犬居城・光明城攻めの様子を地形図で詳細に紹介。犬居城主天野氏の歴史も解説。
第4章 二俣城に散った信康(第2展示室)
…信康事件について解説。ゆかりの地も紹介。
第5章 北遠の城砦を見る(第2展示室)
…北遠の山城を鳥瞰図や縄張図を掲載して紹介。
第6章 笹岡城~二俣城の歴史(第2展示室)
…笹岡城・二俣城・鳥羽山城のジオラマを中心に、城の歴史を紹介。こちらは普段常設されている。
主な展示品と感想
このうち主な展示品のほとんどは第1章にて展示されており、他の章はパネルやジオラマによる紹介が主でした。
主な展示品リスト(同展「開催のしおり」より)を以下に示しながら、主なものに感想を述べていきます。
1, 徳川家康朱印状(田代家文書) 軸装/個人寄贈/浜松市指定文化財 天正8年 1張
→江戸時代に北鹿島村の名主を務めた田代家に伝わる古文書のひとつ。家康が諸役免除と筏流しの特権を与えた朱印状。天正8年ですので、家康が浜松を拠点に遠江国で武田氏と攻防戦を繰り広げていた頃でしょうか。本展では唯一の家康発給文書でした。田代家は筏問屋として地元で有名な家なので、家康との関係を知る上で貴重なものです。
3, 清瀧寺御滝之絵図 絹本着色軸装/絵師:法印鳳月/和歌:平(小栗)広伴 1張
4, 二俣古城懐詩 書幅/依田百川(学海)作/個人寄贈/明治32年(1899) 1張
→作者の依田百川は、かつて二俣城主であった依田信蕃の末裔のようで、百川が二俣に訪問した時に田代家に逗留した際に書いたもののようです。どのような経緯で二俣を訪れたのでしょうか。
9, 清瀧寺寺領絵図(米山家文書) 絵図/個人寄贈/元禄15年(1702)~/正徳2年(1712)頃(ヵ)/浜松地域遺産センター 1枚
→二俣村の名主役を務めた米山家に伝来した絵図。清瀧寺の寺域を示したもの。門前には中泉代官窪島長教の屋敷地(?)の名前があり、元禄15年(1702)~正徳2年(1712)頃のものと推測される。絵図には清瀧寺の他にも山林となった二俣城が描かれており、両者の間の蜷原という場所には、「三郎様御火葬場」と書かれた場所があり杉の大木が立っている様子も描かれている。三郎様とは、徳川家康の長男信康のことであり、二俣城で自害し清瀧寺に墓があります。現在その場所どうなっているかはわかりませんが、清瀧寺における信康の重要性が感じられました。
10, 大久保彦左衛門書状(田代家文書) 軸装/個人寄贈/浜松市指定文化財/寛永年間(1624~1639)頃(ヵ) 1枚
→三河和田(岡崎)の譜代家臣大久保忠員の八男で、「三河物語」の作者として知られる大久保彦左衛門忠教(ただたか)が、若い頃の鹿島椎ヶ脇神社に対して行った非礼について詫びた書状。忠教は、神社裏の岩上から椎ケ脇淵へ石を投げ込むといういたずらをし、後悔して、神社に寄進をしたらしいです。この本人による回想は大久保忠教がかつて二俣城周辺にいたことがわかり、彼が犬居城攻めが初陣だったことと関連する。神社は天竜川をはさんで鳥羽山の対岸に位置している。
11, 乍恐以書付奉願上候(金谷宿助郷御勝栗由緒にて御免願) 書状/個人蔵/(差出人)山東村名主八左衛門外6名 (宛先)柴田郡兵、勝田庄蔵/天保11年(1841) 1枚
→山東村が家康に勝栗を献上したという由緒を持ち出して、金谷宿の助郷を免除するよう嘆願した書状。浜松市には勝栗由緒が多くみられる。山東村と金谷宿の関係を知りたい。両者は結構距離がある気がするが。
12, 遠州味方原御合戦之図(合戦布陣図) 絵図/個人蔵/制作年不詳 1枚
13, 浜松籠城之図(錦絵)酒井の太鼓 絵画/個人蔵/制作年不詳 1枚
→酒井の太鼓を描いた錦絵の中でも著名なものでした。
14, 清瀧寺境内絵図 印刷/絵図/明治35年頃 1枚
15, 城郭図 北遠諸城(犬居、光明、高根城ほか)/個人蔵 7点
→関口宏行氏が作図した復元鳥瞰図・縄張図を掲載。『北遠の城』という冊子にも掲載されているもの。
展示を拝観して
徳川家康と北遠というテーマの展示でしたが、家康家臣の大久保氏の動向が多く扱われていました。家康と北遠の関係は、犬居城攻めや二俣城攻め、信康事件など、様々な要素があるので、そのすべてを紹介していたため、かなりの分量があり、充実していました。展示品も興味深いものばかりでしたが、一つの部屋に集中して展示されていたため、壁面に掲示されていた解説とどのようにリンクするのか、見えにくい部分もありました。まあ小さな資料館なので仕方ありません。解説の分量や展示品も十分に楽しめる展示でした。
内山真龍資料館は約3か月ぶりの訪問でした。小ぶりな資料館ですが、興味深い文書が展示されるので、今後も要チェックです。
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