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早雲寺 戦国大名北条氏の遺産と系譜@神奈川県立歴史博物館

先日、神奈川県立歴史博物館にて行われた特別展「早雲寺 戦国大名北条氏の遺産と系譜」を拝観しました。

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本展ポスター
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神奈川県立歴史博物館

 本展は、早雲寺開基500年を記念した特別展で、戦国大名北条氏の菩提寺である早雲寺の寺宝・資料を展示し、北条氏一族が残した遺産と、その後の一族の動向にまで注目したものでした。
 本展では、早雲寺の関係資料かたら北条氏の政治と文化を窺える展示品が多く、見ごたえがありました。特に、関東(古河公方)足利氏が関東に作り上げた文化圏において、京都から招かれた関東画壇絵師たちの作品が展示されており、文化史から戦国期関東を見直すことができました。また早雲寺の住持たちやその法嗣たちの動向にまつわる資料もあり、早雲寺の末寺や塔頭の継承や、大徳寺住持への出世など、早雲寺が北条氏の政治や京都との関係・小田原文化に果たした役割を、早雲寺や末寺本光寺の文書かた解き明かしていました。
 そして、後半は豊臣秀吉による小田原攻めでの焼亡以降、早雲寺が、その住持や近世狭山藩北条氏・玉縄北条氏によって再建・復興されていく様相を、展示品から明らかにしていました。特に、近世の狭山藩北条氏が自家の由緒を形成する過程の中で、早雲寺の復興に尽くしていく様相が、展示資料から読み取れました。近世に残った北条氏一族が、戦国大名北条氏の由緒を確認し、再建に助力する姿に胸が熱くなりました。そして、著名な北条氏五代の画像に関しても、その伝来過程・制作時期から、狭山藩北条氏の系譜意識の芽生え・由緒の確認事業との関連がみられました。普段何気なく目にする戦国武将の画像についても、その背景には後世の人々の系譜意識・由緒形成の歴史があることを、画像の伝来・制作過程の分析から明らかにされており、非常に興味深く感じました。
 本展の図録も、充実しており、コラム・論考も読みごたえがありました。史料の釈文が付されていないのが口惜しいですが、北条氏の歴史を考えるうえで価値のある図録だと思います。

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本展図録

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