非城識人ノート

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戦国時代の漆器 出土品からみた漆器の様相@葛飾区郷土と天文の博物館

先日、葛飾区郷土と天文の博物館にて行われた特別展「戦国時代の漆器―出土品からみた漆器の様相―」を拝観しました。

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本展ポスター
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葛飾区郷土と天文の博物館

 本展は、中世以降諸階層に広く食器として使用された漆器について、葛飾区の葛西城にて出土した戦国時代の漆器を中心に、各地の城館などで出土した資料を通して戦国時代の漆器の様相を考えるものでした。戦国期の城館から出土する遺物は、陶磁器やかわらけが多いですが、漆器が出土するのは立地条件に大きく左右されるため、漆器のみを特集し、さらに各地の出土品との比較も行った展示はかなり珍しい(攻めている)ものだと個人的に思いました。
 漆器をはじめとする木製品は、日本の土壌であると虫や菌類によって分解されるため、通常は残らない場合が多いですが、地下水など水分を多く含んだ沖積低地などは、木が土中で真空パックされて酸素が遮られる状態になるため、腐食が進まずに残るそうです。よって葛西城のような水辺に近い平城で漆器が出土しています。本展で漆器が展示された遺跡は以下の通りです。
 騎西城(埼玉県)・深谷城(埼玉県)・葛西城(東京都)・鎌倉(神奈川県)・小田原城(神奈川県)・駿府城内遺跡(静岡県)・小川城(静岡県)・清州城下町遺跡(愛知県)・七尾城跡シッケ地区遺跡(石川県)・一乗谷朝倉氏遺跡(福井県)・草戸千軒町遺跡(広島県)
 このうち、各地の城館跡から出土した漆器が展示されていましたが、やはり葛西城から出土した漆器は約70点以上と、最も多く展示されていました。戦国時代の漆器研究のメッカなのかもしれませんね。
 本展では、漆器を形態を①器高が高い椀・②器高が低い椀・③皿の3つに分けて分類したり、漆器に描かれた文様の分析を行うなど、様々な視角から漆器を分析しており、興味深い展示でした。
 本展では図録も発行しており、展示を復習することができます。また本展のオリジナルグッズとして葛西城跡から発掘された「青花器台」「漆器椀」があしらわれた定規も販売されており、購入しました。

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本展図録
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オリジナルグッズの定規

 葛飾区郷土と天文の博物館は、2020年にリニューアルオープンされたそうで、2階常設展示室「かつしかの歴史」は、白を基調としたデザインの展示室で、展示資料が見やすいものとなっていました。黒を基調とした展示室をもつ博物館は多くありますが、床から壁・天井まで白色で統一された展示室は珍しく感じました(美術館ではよく見られるかも)。また映像資料や、タッチパネル展示も多くあり、充実していました。当館では、新型コロナウイルス対策が徹底されており、タッチパネルに触れる用の手袋や、入館者用のバッチを着用するなど、安心して展示を楽しむ工夫がなされていました。博物館の在り方としても、学ぶ点が多く、勉強になりました。

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