非城識人ノート

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鎌倉殿をとりまく者たち@三嶋大社宝物館

先日、静岡県三島市三嶋大社宝物館にて行われた前期特集展示「鎌倉殿をとりまく者たち」を拝観しました。

三嶋大社宝物館

本展は宝物館の前期特集展示として、三嶋大社宮司矢田部家に伝わる源頼朝北条義時をはじめとする鎌倉幕府関係の文書を中心に、館が所蔵する宝物を展示するものでした。主な展示は以下のとおり。
・治承4年10月21日付 源頼朝寄進状写
・治承5年7月29日付 源頼朝下文
・治承7年(寿永2)3月14日付 源頼朝
建仁3年8月10日 紙本墨書般若心経(源頼家筆)
元久2年2月29日付 北条時政袖判左衛門尉政元(時政奉行人)奉書
・(元久2年)閏7月27日付 北条義時書下
・安貞2年3月30日付 関東下知状(北条泰時北条時房)
・建長元年10月日付 伊豆国司庁宣 
・正和4年9月10日付 関東下知状(北条基時・金沢貞顕)
・弘長元年6月6日付 得宗公文所奉書

さすが三嶋大社、鎌倉初期の古文書が多くて眼福でした。
特に、義時書状は県下唯一のものと紹介があり、時期的には父時政を追放した直後に発給されたもののようです。静岡県では義時の記録は少ないのは意外でした。展示のキャプションには「北条義時書状」と書かれていた記憶があるのですが、書き止めに「状如件」とあったので、書状ではないように思いました。パンフレットには「書下」とあるのでそちらの方が相応しいように思われます。

北条義時書下(三嶋大社パンフレットより)

また北条時政の袖判が入った、左衛門尉政元奉書も興味深く拝見しました。政元という人物は北条時政の奉行人と解説があり、源頼家失脚直後における時政の権力の大きさが伝わってきました。

北条時政袖判政元奉書(三嶋大社パンフレットより)

その源頼家といえば、頼家自筆の紙本墨書般若心経も出陳されており、驚きました。

源頼家筆般若心経(三嶋大社パンフレットより)

このほか、北条泰時・時房連署の関東下知状や、源頼朝の下文も2,3点展示されていましたが、そのうち治承4年10月21日付源頼朝寄進状写は、偽文書の疑いもかけられている紹介がされており、三嶋大社の由緒形成を考える上でも重要な史料でした。

また特集展示には含まれていませんでしたが、神社通史展示スペースには、治承4年8月19日付の頼朝下文も展示されていました。8月17日が頼朝挙兵の時なので、その直後のもので大変貴重でした。頼朝の息遣いが伝わってくるようでした。

源頼朝下文(三嶋大社パンフレットより)

特集展示では、さまざまな宝物と題した展示も行われており、そこには建武元年2月9日付足利尊氏寄進状もありました。通史展示スペースも三嶋大社の歴史がうかがえる展示が行われており、永禄12年閏5月4日付北条氏政判物は、今川氏滅亡時の三嶋大社周辺の状況が伝わってくるものでした。

三嶋大社かつて訪れたことがありましたが、宝物館は初めて訪れました。こじんまりとした施設にも関わらず、展示されているものは一級品が多く、とても見ごたえがあり、十分に楽しめました。伊勢宗瑞などの文書もあるようなので、宝物館の展示替え情報もチェックしながらまた訪れてみたいです。

三嶋大社