非城識人ノート

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黒田基樹著『戦国関東の覇権戦争 北条氏VS関東管領・上杉氏55年の戦い』(洋泉社歴史新書y、2011年)

黒田基樹著『戦国関東の覇権戦争 北条氏VS関東管領・上杉氏55年の戦い』(洋泉社歴史新書y、2011年)読了。
伊勢宗瑞の関東進出から上杉謙信が死去するまで、関東支配の正当性をめぐって争った北条氏と上杉氏の争いを中心に、戦国期関東の政治世界を叙述する1冊。

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黒田基樹著『戦国関東の覇権戦争 北条氏VS関東管領・上杉氏55年の戦い』(洋泉社歴史新書y、2011年)

概要と感想

本書では、戦国期関東の政治史・合戦史を、北条氏と上杉氏の争いを主軸に、両者の間で揺れ動いた国衆たちの存在に注目しながら叙述している。北条氏綱vs山内・扇谷両上杉氏の期間や、北条氏康vs上杉謙信の期間、そして越相同盟成立と解消まで、北条氏と上杉氏は、関東管領の立場や政治秩序を意識しつつも、国衆の動向に左右されながら攻防を続けていたことがよく理解できた。また越相同盟後に自立しはじめる佐竹ら北関東の勢力や、謙信死後に意識されなくなる関東管領の地位など、室町時代以来の政治秩序が、徐々に弱体化していく様相も時系列を追って把握することができた。そして北条・上杉両者の間で選択を迫られた国衆の家内部における分裂や、北条・上杉による介入など、関東の勢力図の変動を左右する国衆の動向に注目することで、戦国大名個人のカリスマ性などでは説明できない戦国期合戦の複雑な構造を理解できる。

気になったところ

羽生城での攻防や上野国新田領周辺の政治状況など、城館をめぐる合戦についても、もう一度復習したいポイントがあった。備忘のために記す。

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