加藤理文著『家康と家臣団の城』(角川選書、2021年)
加藤理文著『家康と家臣団の城』(角川選書、2021年)、読了。
織田・豊臣の城とは異なる、徳川家康やその家臣団の城の特徴をまとめ、幕府や徳川家臣団がどのような城づくりを目指していたのかを明らかにすう一冊。
概要と感想
本書は、中井均著『信長と家臣団の城』(角川選書、2020年)と同著『秀吉と家臣団の城』(角川選書、刊行予定)との三冊セットを構成するものであるらしい。本書でも徳川家康の居城だけでなく、一門や家臣団の居城、合戦での陣城まで、家康の築城を体系的に分析している。
中井均著『信長と家臣団の城』(角川選書、2020)読了。織田信長の居城だけでなく、一門や家臣団の居城、合戦での陣城まで、信長の築城を体系的に分析する。家中における織豊系城郭の三要素(石垣・瓦・礎石建物)の浸透度や、居城と聖地の関係、攻城戦での陣城の運用等、信長の城と戦争を見つめ直す1冊。 pic.twitter.com/v0VkgXy8EU
— まさじい (@enshujoukaku) 2020年9月12日
本書の特色は、最新の研究状況から徳川家の城の特徴を明らかにしようとするところである。特に、駿府城天守台の発掘調査の成果についても言及がなされている。天正13~15年の間に、徳川家康は豊臣政権ナンバー2の地位を得るという変化を経ているため、駿府城はその地位にふさわしい城として、「豊臣政権が全面的に関与して改修工事を実施しようとした」と評価している。
また、戦国大名徳川家の築城の特色として、丸馬出の使用をあげ、諏訪原城や丸子城を例に丸馬出が必ずしも武田氏城郭の専売特許ではなかったことを述べている。その後、小牧・長久手合戦後に対豊臣を想定した領国内の城の大規模改修を行うといい、この時期に三河から遠江・駿河にかけての主要な城に、丸馬出をはじめとした技巧的な縄張を積極的に用いているようになったとしている。以上のように、東海の徳川氏領国の城について、豊臣政権と徳川氏との政治関係の変遷を追いながら、その築城・改修の時期や城郭構造の再評価を行っている。
そして、関ケ原後から大坂の陣までの豊臣氏と徳川氏の“冷戦”関係における築城の様相を解説する。石材の少ない関東への移封したため、築城工事の技術者集団の成長が遅れていた徳川氏は、関ヶ原後において豊臣系大名を天下普請に動員することで、徳川方の拠点を増強しており、さらに彼らとの縁戚関係を築くことで“大坂城包囲網”を固めっていったという。