非城識人ノート

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黒田基樹著『北条氏康の家臣団 戦国「関東王国」を支えた一門・家老たち』(洋泉社歴史新書y、2018年)

黒田基樹著『北条氏康の家臣団 戦国「関東王国」を支えた一門・家老たち』(洋泉社歴史新書y、2018年)、読了。戦国大名北条家3代当主、北条氏康が当主となってから死去するまでの約30年を対象に、氏康・氏政を支えた一門・家老に焦点をあてて、北条家の政治・軍事動向における、大名家執行部にみられた人員養成と、その変遷の状況を述べる一冊。

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黒田基樹著『北条氏康の家臣団 戦国「関東王国」を支えた一門・家老たち』(洋泉社歴史新書y、2018年)

概要と感想

前述のように、本書では、氏康が3代当主になってから、4代当主を嫡子氏政に譲ったのちも氏政を支えつづけ、死去するまでの一門・家老の変遷を、当時の北条家の政治状況の変化と関連させて解説されている。北条家の歴史だけではなく、北条家一門・家臣団の変遷にも着目して叙述されたものは、かなり珍しく感じた。氏康が2代当主氏綱から北条家を受け継いだ当時は、一門も家老も少数だったものが、領国の拡大・国衆の従属や子息・一門の増加によって、一門・家老が増加し、領国の一部支配権や国衆の編成も、彼らに委ねるようになる。また戦争状況によって、一門・家老・寄親たちの配置換えがあったり、彼らの戦死に伴って、家臣団を保護したり、新たな後継者を相続させるなど、軍団を維持するために様々な心遣いをしなければならなかった当主氏康の苦悩をも感じられた。
氏康が当主となった時点の北条家と、氏康が死去した際の北条家は、家臣団の構成や規模がかなり異なるものであり、一口に「戦国大名」とくくるには、その組織体は成長段階によって異なるものであることが実感できた。その他の戦国大名に関しても、その組織体である家臣団編成の変遷を細部まで検証することで、戦国大名の定義やその段階をより精密に考える重要性を再認識した。

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